「面白かったよ」「ここはつまらなかった」
小学生のころ、自分たちでつくった手作りのボードゲームを友達と遊び合うと、そんな率直な感想が返ってきました。
当時は『ドラゴンクエスト』のようなRPGが流行っていて、題材もそこから借りていました。勇者、戦士、魔法使い、僧侶。キャラクターを決めたら、それぞれに合わせたパラメーターを書き込み、武器や防具、道具といったアイテムを考える。頭の中でアイデアを膨らませながら、夢中で手を動かして形にしていきました。
できあがったら、お互いのゲームで遊び合います。見せ合いっこというより「遊び合いっこ」です。友達に遊んでもらって感想をもらい、「じゃあ今度はこうしてみよう」と手直しする。いま振り返ると、考えて、形にして、人に見せて、また工夫する——そんな試行錯誤のサイクルを、遊びの中で自然と回していたのだと思います。
思い返せば、子どものころからずっとものづくりが好きでした。ガンプラやミニ四駆、チョロQを自分なりにカスタマイズして、ごっこ遊びに使ったりもしていました。ただ、すでにあるものを改造するのと、何もないところからゲームを生み出すのとでは、少しワクワクの種類が違いました。ボードゲームづくりは、自分の頭の中にしかなかった空想を、ゼロから現実の世界に引っ張り出す遊びだったのだと思います。
頭の中にあるものを、外に出す時間
フリースクール トイベースの「トイ」には、英語の「toy(遊び)」と、自ら考えを巡らせる「問い」の2つの意味を重ねています。友達と夢中でボードゲームをつくり、工夫を重ねていた時間こそ、まさに「トイ」の原点だったように感じます。
2026年11月に練馬区で開設するトイベースでは、この「頭の中にあるものを外に出す」時間を、アートと呼んで大切にしたいと考えています。
アートが何なのかを言葉にするのは、正直いまでも難しく感じます。でも私にとっては、自分の感性を表現すること、頭の中の空想を具体的な形にすることそのものです。だから手段は、絵を描くことでも、工作でも、なんでも構いません。とても広い意味で捉えています。
大人になったいまも、ギターやピアノを弾いて曲をつくったり、タブレットでデジタルアートを描いたりと、表現を楽しんでいます。紙の上では平面でしか表せないものが、デジタル空間の3Dなら奥行きをもって立ち現れる面白さもあります。一方で、身近な廃材を集めてつくる「ゴミアート」や、自分で書いた詩を一冊の小さな本に製本するような、手触りのある創作も大好きです。手を動かして内面を表現する楽しさは、子どものころからずっと変わっていません。
石神井公園の四季を、そのまま材料に
身近なものを集めてつくる面白さを、トイベースでも子どもたちと一緒に味わいたいと思っています。その材料を探すフィールドとして考えているのが、石神井公園です。
午後の時間は外に出て過ごすことを基本にし、そこで何をするかは子どもたちと話し合って決めていきます。自然と触れ合っていると、日本の豊かな四季が肌で感じられます。春の桜や新緑、秋の鮮やかな落ち葉。石神井公園の春夏秋冬のひとかけらを公園で見つけて、それを材料に作品をつくってみる。そんな活動ができたら面白いなと考えています。
もちろん、公園の自然をなんでも自由に持ち帰っていいわけではありません。石神井公園には国の天然記念物に指定されている三宝寺池沼沢植物群落など、守るべき貴重な自然環境があります。「どこで、何を、どれくらいなら分けてもらっていいのか」。環境への配慮やルールを子どもたちと一緒に確かめることも、大切な学びのひとつです。11月の開設直後は、秋の終わりに足もとに落ちているどんぐりや落ち葉を集めるところから始まりそうです。
つくったら、誰かに見てもらう
そして、作品は「つくって終わり」にはしたくありません。
小学生のときのボードゲームも、友達が遊んで感想をくれたからこそ、「次はもっとこうしよう」と熱中できました。だからこそトイベースでも、作品を誰かに見てもらえる場をつくりたいと考えています。保護者の方に向けた定期的な発表の場はもちろん、年に1回、練馬区の公共施設などを借りて、展覧会を開くのも面白そうです。そのときは、近隣のほかのフリースクールにも声をかけて、みんなを巻き込んだイベントにできたら——そんな構想を膨らませています。
ただ、発表の場をつくることには、ひとつだけ迷いもあります。
作品を並べると、どうしても「あの子のほうが上手」「自分のほうが下手」と、周囲と比べてしまう空気が生まれやすいからです。私たちが大切にしたいのは技術の上手・下手ではなく、その子ならではの感性や個性が表現されているかどうかです。それでも展示という場において、他人との比較にどう向き合っていくかについては、まだ明確な正解を持っているわけではありません。
けれど、ひとつだけ子どもたちにしっかり伝えたいと決めていることがあります。
比べる相手は、周りの誰かではなく「過去の自分」でいい、ということです。
過去の自分と比べてみれば、人は必ずどこかで成長しています。「前は思いつかなかった色が使えた」「前よりあきらめずに最後までつくってみた」。過去の作品と今の作品を並べて、自分自身の変化や小さな前進に気づくこと。そうした積み重ねが、「自分はできる」「自分には表現したいものがある」という自己効力感につながっていくはずです。
練馬区のフリースクールとして迎える最初の秋。子どもたちがそれぞれの「頭の中の世界」をどんな形で外に連れ出してくれるのか、今からとても楽しみにしています。




